詩は一つ。音楽は111通り。解釈は無限大。
世界中の作曲家たちを虜にした『野ばら』。
世界中の作曲家たちを虜にした、ドイツの詩人・ゲーテ(Goethe)の詩『野ばら』。
一般に知られているのは、シューベルト(Schubert, Franz Peter)とウェルナー(Werner,Heinrich)による作曲の楽曲です。
日本では、学校の音楽の教科書などで習った人も多いのではないでしょうか?
しかし、ドイツの文学博士ハンス・ヨアヒム・モーザー(Hans Joachim Moser 1889-1967)の『ゲーテと音楽』(Goethe und die Musik)(ライプツィヒ・1949)の論文によると、歌曲『野ばら』は154曲存在するとされています。
しかし,第二次世界大戦後に記憶を辿りながら執筆された為か、実際の作曲家リストのほとんどは失われていました。
そんな中、日本の坂西八郎教授は91曲の楽譜を収集し、1987年に<わらべはみたり…「野ばら」88曲集>(坂西八郎編・岩崎美術社)、1997年に<楽譜「野ばら」91曲集>(坂西八郎編・岩崎美術社)として出版されていました。
世界初の『野ばら』のみを集めた歌曲集・・・この出逢いこそ、野ばらプロジェクトの代表・土田悠平(バリトン歌手)が『野ばら』の研究を始めるきっかけとなったのです。
土田は、かねてから詞が同一で旋律が異なる楽曲に面白さを感じていたものの、それ以上に楽譜集が出版されていたことに大きな感銘を受けていました。
実際に入手して楽曲を演奏するうちに「まだ出逢っていない『野ばら』を探し出したい!」と思うようになったのです。
思い立った後、土田は一人で楽譜を探すための旅に出ました。
そして、ひたすら楽譜をめくり続けること数年。
2012年の調査開始から訪れたのは、13ヶ国30都市となりました。(2016年3月現在)
現代の書籍はデータベースなどで整備されたものも多いですが、昔の楽譜となればそうはいきません。
おまけに、時代によってはタイトルが書かれていないものもあり、その場合は歌詞を見なければなりません。
つまり、自らの手で一つ一つのスコアをチェックし、探していくしかないのです。
行く先の図書館で、ひたすらブックカードや楽譜をめくり続け・・・新発見とされる20曲の楽譜収集に成功したのです。(2016年3月現在)