始まりは、一人の青年が旅に出たことでした。
「童は見たり、野なかの薔薇…」
日本でも、近藤朔風(こんどうさくふう)の訳詞でお馴染みの歌曲『野ばら』(Heidenröslein)。
ドイツの詩人、ゲーテに書かれた詞が、シューベルト(Schubert, Franz Peter)やウェルナー(Werner, Heinrich)によって曲をつけられたことで有名です。
が、実際は、文献上154曲存在すると言われています。
日本の坂西八郎教授は、歌曲『野ばら』の楽譜を収集し、1987年に<わらべはみたり…「野ばら」88曲集>(坂西八郎編・岩崎美術社)、1997年に<楽譜「野ばら」91曲集>(坂西八郎編・岩崎美術社)として出版されていました。
たった一つの詩にも関わらず、一つとして同じ楽曲はない・・・。
歌曲『野ばら』に感銘を受け、同じ日本人である坂西教授の偉業にただただ感動したのは数年前のこと。
その心のままに新たな楽譜との出逢いを求め、青年は海を渡りました。
確かなあてもないまま、ひたすら楽譜をめくり続けること数年。
青年は、新発見とされる20曲の楽譜収集に成功しました。
しかし、彼はそれで終わりませんでした。
演奏会を開催し、楽譜集を出版、さらにCDーBOXを作りました。
見つけた音楽を演奏することで再現し、多くの人たちにお聴き頂くこと。
これらは声楽家である青年、土田悠平が旅に出掛けたときから、一連の計画として予定していたものでした。